長野県諏訪市のまちなかに、古材や古道具が次の持ち主へ渡っていく拠点『ReBuilding Center JAPAN(リビセン)』がある。
ここでは解体や片づけの現場から“レスキュー”された木材や道具が手入れされ、また暮らしの中へ帰っていく。
古い道具は、持ち主にとって長く寄り添ってきた大切な存在。
リビセンはそれらに「捨てない」選択肢を与え、次に大切にしてくれる人のもとへ橋渡しをする。
その姿勢が地域の信頼を集め、日々沢山の相談が寄せられている。
古材を活かすカフェの空間

リビセンの建物に入るとまず一階にカフェが広がる。
古材を組み合わせたカウンターや壁、柔らかな灯り。

子どもと一緒でも過ごしやすい小さなスペースもあり、地域に開かれた居場所になっている。
焼き菓子の甘い香りと木の質感が交わる空間は、どこか新しく、どこか懐かしい心地よさに包まれている。

縁日が拠点を整える際にも、私たちはリビセンに施工をお願いした。
カフェのテーブルや椅子、トイレの扉、象徴的な厨房カウンター。
素材は縁日の古民家から出た板を使ってもらった。
「あるものを今に生かす」リビセンのクリエイティブで、時間の跡をたたえたやさしい空間に仕上がった。
最近の改装では、古材をそのまま使うだけでなく、表面を削り新しい肌理を与える提案も増えたとのこと。
古材の活用は「保存」と「更新」のあいだを往復し、使い手にとっての選択肢を広げている。
道具に宿る物語

階段を上がると、2階・3階にはレスキューされた道具が並ぶ。
器、籠、照明、学校で使われていた机。新品にはない、時間のやわらかさと温度がある。

棚には、モノの来歴を伝える短い言葉も添えられていた。誰が、どんな場所で、どんなふうに使っていたのか。
モノだけでなく、記憶も一緒に受け渡す。リビセンらしい循環のかたち。

倉庫では、ケヤキやクリ、イチイなどの板が整然と並ぶ。
スタッフが一枚ずつ引き出し、厚みや反りを確かめる姿は、木と対話しているように見える。

ここで選ばれた材は、やがてテーブルやカウンター、建具へと姿を変え、街の新しい風景をつくっていく。
逞しく、丁寧な仕事

売り場では、重い什器を動かし、レスキューした道具を一つずつ配置していく作業が続く。
地道な積み重ねが空間の心地よさをつくり、モノが次の持ち主と出会うきっかけを増やしていく。

ここで働くスタッフは、縁日の SAPPAKAMA や KAPPOGI を日々の仕事着として愛用している。

動きを妨げず、着るほどに自然体でいられる“道具”として、日々の仕事を支えている。

毎日のように履き重ねるうちに膝の補修にも愛着が宿り、必要なときは縁日の「永久修繕」を活用して長く付き合っている。
仕事着にも日常着にも、縁日の衣服がリビセンの暮らしに一部にそっと溶け込んでいる。
「もっと現場でハードに使えるものを」。リビセンからの声を受けて 刺子SAPPAKAMA の開発が動き出した経緯もある。
服はつくって終わりではない。使い手の暮らしの中で直され、育っていく。
リビセンの衣服との向き合い方は、その実感を与えてくれる。
まちへ広がるリビセンの仕事 ― エリアリノベーション

いま、リビセンの仕事は店内にとどまらない。
空き家や空き店舗の活用、店舗内装の設計・施工、家具製作などを通じて、エリアリノベーションにも力を注いでいる。

リビセンの手が入った店は、古材の質感と現代の機能がほどよく調和し、歩いていて楽しい。
それが一本の通りに連なり、やがて街の表情を変えていく。

昼はカフェやベーカリーに人が集まり、夜は小さなバーや食堂の灯りがともる。
地元の人の日常に寄り添いながら、旅人や移住者、若い世代も自然と呼び寄せる。
「使われなくなっていた場所が、もう一度“今”の場になる」
リビセンの施工が入った店が点から線へ、線から面へと広がることで、まちに新しい循環が生まれている。
二つの営みが重なるところ
リビセンが掲げる「ものを救い、つなげる」営み。
縁日が続けてきた「暮らしに寄り添う服づくり」。
その二つが交わるとき、商品や店舗の紹介を超えた風景が見えてくる。
家具を並べる背中、木材を選ぶ手元、カフェで交わされる挨拶。
そこにある衣服は、目立たなくていい。ただ確かに役に立って、長く側にいてくれるもの。
モノも服も人も、それぞれの時間をまといながら、同じリズムで暮らしをつくっていく。
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