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山の神に祈る。マタギの里・秋田阿仁を訪ねて

2026年11月1日。狩猟解禁日を迎えたこの日、秋田県北秋田市の阿仁地区を訪れました。

阿仁は、マタギ発祥の地として知られる場所。

古くから熊をはじめとする山の獣たちと関わりながら、自然の恵みをいただき、山とともに暮らしてきた人々の文化が、今も受け継がれています。

縁日でつくっている「マタギもんぺ」も、この地で受け継がれてきた山の仕事着が原点です。

マタギたちは山の恵みに感謝するとともに、自然の厳しさや人間の力が及ばないものへの畏怖の念を持ち、山の神様を大切に祀ってきました。

今回、そんな阿仁のマタギたちが代々大切に守り続けてきた「山の神神社」に参拝させていただきました。

山の神様に、猟の安全を祈る

山の神神社は、マタギたちにとって特別な場所です。

山に入る前には山の神様に祈りを捧げ、山の恵みをいただくことへの感謝と、猟の安全を願います。

今回も、これから始まる一年間の猟が安全であること、そして良い猟果に恵まれることを願い、手を合わせました。

マタギの世界では、山の神様は嫉妬深い女性の神様だと伝えられています。

機嫌を損ねてしまうと、山で災いが起きたり、獲物に恵まれなくなったりすると言い伝えられてきました。

そのため、マタギたちは山の神様を敬い、さまざまな作法や習わしを大切に守ってきたそうです。

そのひとつが「オコゼ」を使った風習です。

山の神様とオコゼ

オコゼは、少し変わった姿をした魚です。

マタギの間では、その不格好な姿をしたオコゼを山の神様に見せることで、神様が自分の美しさに満足し、機嫌を良くすると伝えられています。

そのため、オコゼの干物は山の神様を喜ばせるための大切なものとして扱われてきました。

今回、特別に縁日の「オコゼの手拭い」を、オコゼの干物に見立てて奉納していただきました。

マタギの文化から着想を得て制作した手拭いが、こうして阿仁の山の神様に奉納されることは、私たちにとっても本当にありがたい出来事でした。

昔から続く風習の中に、縁日のものづくりが少しだけ関わることができたようで、とても感慨深い時間でした。

モロビの煙で身体を清める

参拝では、もうひとつ印象的な儀式がありました。

「モロビ」と呼ばれるアオモリトドマツの葉を燃やし、その煙で身体を清めるというものです。

モロビは古くから、穢れを払い、身を清める力があると信じられてきました。

火をつけると、あたりにはアオモリトドマツの清々しい香りが広がります。

その煙を身体に浴びながら、これから山に入るための気持ちを整えていきます。

自然の香りに包まれていると、不思議と気持ちも静かに落ち着いていくようでした。

山の恵みをいただく前に、まず自分自身の身と心を清める。

そこには、山に対して謙虚であろうとするマタギたちの姿勢が感じられました。

山の神を守り、山の神に守られる

豊かな自然の中で、山の恵みをいただきながら暮らしてきたマタギたち。

自然をただ利用するのではなく、その恵みに感謝し、ときに恐れ、山の神様を敬いながら、自然と向き合ってきました。

山の神を守り、山の神に守られる。

そんな関係が、阿仁の暮らしや文化の中には今も息づいているように感じます。

近年、全国各地で熊の出没や人身被害が問題となり、人と野生動物との関係が大きく変化しています。

自然環境や人々の暮らしが変わる中で、自然との共生はますます複雑で難しいものになっていると感じます。

もちろん、昔の暮らしや考え方をそのまま現代に当てはめることはできません。

それでも、長い年月をかけて山と向き合い、自然の中で生きる知恵を積み重ねてきたマタギたちの精神性や知識、技術には、今だからこそ学ぶべきことがたくさんあると思います。

人もまた、自然の一部であるということ。

山の恵みをいただくことへの感謝と、自然に対する畏怖を忘れないこと。

今回の阿仁での参拝は、そんな大切なことを改めて考える機会となりました。

これからも狩猟やものづくりを通じて、山と人との関わりについて学び続けていきたいと思います。

縁日 蜂谷淳平