暮らしのあれやこれや

縁日の裂き織タグができるまで

縁日の服には、東北の衣文化を象徴するアイコンとして、小さな裂き織のタグが縫い付けています。

SAPPAKAMAをはじめ、縁日のさまざまな商品についている裂き織タグは、岩手県盛岡市の「幸呼来Japan(さっこらジャパン)」の皆さんに織っていただいています。

裂き織タグは、縁日の服をつくるときに出るハギレを使っています。

服作りの過程で、どうしても出てしまう余り布を、捨てずに全て使い切りたいという思いで裂き織タグを織っていただいています。

東北で受け継がれてきた「裂き織」という手仕事から生まれるこの小さなタグは、縁日にとって、モノを最後まで使い、長く大切にしてきた衣服との関係性を表す象徴でもあります。

今回、その裂き織タグがどのようにつくられているのか、盛岡にある幸呼来Japanの工房を訪ねました。

 

東北の「使い切る」知恵、裂き織

裂き織は、古くなった布や余り布を細く裂き、それを織り込むことで、もう一度一枚の布へと生まれ変わらせる手仕事です。

布が貴重だった時代、東北では一枚の布を繕いながら長く使い、最後には裂いて織り直すなど、限られたものを使い切る知恵が暮らしの中で受け継がれてきました。

盛岡市に工房を構える幸呼来Japanは、そんな裂き織の技術を現代のものづくりへ繋いでいます。

幸呼来Japanの裂き織事業が始まったのは2010年のこと。

きっかけは、障がいのある方々が身につけていた高い裂き織の技術を仕事として活かせる場所をつくろうと、裂き織の事業が始まり、2011年に株式会社幸呼来Japanが設立されました。

現在は就労支援事業を行いながら、裂き織の製造や製品づくりに取り組んでいます。

 

「裂き織は、準備が8割」

縁日から幸呼来Japanへ送っているのは、服を裁断したあとの余り布です。

大きさも形もばらばらで、商品によって生地の種類や厚みもそれぞれです。

この布が織り機にかかるまでには、とても多くの時間と人の手がかかります。

幸呼来JAPANの村山さん。縁日のものづくりに共感いただき、細かなオーダーにも柔軟に応えてくださる心強きパートナー。

「裂き織は、準備が8割なんです」

幸呼来JAPANの村山さんに、そう教えていただきました。

届いたハギレをそのまま裂いて、すぐに織るわけではなく、まずは一枚一枚きれいにアイロンをかけ、布の状態を整えていきます。

それから、折り込み易いように細い紐状に裁断していきます。

その幅も、すべて同じではなく、生地が厚ければ8mmほどに、薄ければ1cmほどに、裁断していきます。

生地の厚みに合わせて裁断する幅を細かく変えるのは、織り上がったときの厚みや幅が揃うようにするためです。

そして細く切った布の端を斜めにカットして行きます。

布と布を継ぎながら織っていくため、端がまっすぐなままだと、重なったところが厚くなってしまいます。

ほんの小さなひと手間ですが、この斜めのカットによって継ぎ目の厚みを抑え、きれいな織り上がりにつながります。

幸呼来JAPANの裂き織はクオリティが高く、簡単に織っているように見えてしまいますが、高いクオリティの裏には細かな気配りがたくさん詰まっています。

 

約2cmを、まっすぐ織る

縁日の裂き織タグの幅は、約2cm。

小さいものだから大きいものを織るよりも簡単なように思いますが、むしろその逆で、この細さが難しいのだそうです。

手織りのため数ミリほど幅に差が出ることは致し方ないのですが、幅のある一枚の布なら気にならないわずかな違いも、2cmほどしかない細いタグでは、その数ミリが大きな歪みに見えてしまいます。

縁日のタグをお願いし始めた当初、この細さを安定して織ることができたのは2人だけだったそうです。

最初の頃は、定規をあてて幅を確認しながら一段一段時間をかけて織っていたそうです。

そこから繰り返し織り、少しずつ技術を磨き、現在は4名の織り手さんが順番に縁日の裂き織タグを担当してくださっています。

今では定規を使わなくても、目で確認しながらほぼ均一な幅に織ることができるそうです。

一人が一日に織れる長さは、およそ1.5mほど。

「難しいけれど、技術を身につけるためのいい仕事になっています」

そう話していただけたことも、私たちにとってとても嬉しいことでした。

 

トントンと、一段ずつ

工房の中ではトントンと、裂き織を織る心地よいリズムが響いています。

織り上がった裂織りを見ると、力強く布がギュッと詰まった綺麗な裂き織のタグが出来上がっていました。

細く切った布がねじれないように、指先で向きを丁寧に整えて織ることで、平らに織り上げることができます。

綺麗に織り上げるのも細やかな気配りが必要なのです。

織るなかでほつれた糸が出ていれば、その都度ハサミで切ります。

そしてまた布をまっすぐに整えてから経糸の間に通し、トントンと織り込んでいく。

そしてまた次の布を整えて、通して、トントン。トントン。

単純そうに見える作業も、高い集中力と根気強さと丁寧さが求められる仕事です。

改めて職人さんたちの、綺麗な仕事に頭が下がりました。

 

見えないところほど、丁寧に

織り機に経糸をかける作業も見せていただきました。

細い経糸を一本一本、決められた順番で綜絖に通していきます。

一本でも場所を間違えれば、正しく織ることができません。

さらに大切なのが、経糸を張る力とのこと。

それぞれの張り具合が揃っていなければ、織り上がった布そのものが歪んでしまいます。

織り手さんは手の感覚を頼りに、張り具合を確かめながら均一に糸を張っていきます。

きれいに揃った経糸も、最後に手元できゅっとまとめられた小さな結び目もとても美しく、職人さんの真面目さが仕事に現れているようでした。

 

小さなタグに込められているもの

縁日の裂き織タグは、とても小さなものです。

ですが、その小さなタグができるまでを実際に見てみると、そこには多くの時間と技術と職人さんたちの手仕事がありました。

縁日の服をつくるときに生まれたハギレが幸呼来Japanへ渡り、一枚一枚整えられ、たくさんの丁寧な仕事を通って、小さな裂き織となり、もう一度縁日の服へと戻ってくる。

新しいものを次々につくるだけではなく、今あるものを最後まで使い切ること。

そして、使えなくなったら終わりではなく、手を加えながら、また次の役割へつないでいくこと。

それは、布が貴重だった時代から東北の暮らしの中で培われてきた、知恵でもあり、衣服との大切な関係性でもあります。

昔からの知恵は、今の時代だからこそ大切な暮らしの知恵です。

見えるところだけではなく、完成すれば隠れてしまうところまで丁寧に仕事をする。

幸呼来Japanの工房で見たものづくりは、そんな小さな積み重ねの連続でした。

これほど丁寧な手仕事から生まれたものが、縁日の一着一着に私たちの服作りへの象徴として付いています。

工房を訪ね、そのことを改めて誇らしく感じました。

そして縁日のものづくりが、幸呼来JAPANの皆さんのやりがいや喜びに繋がっていることもお伺いでき、とても心の温まる時間でもありました。